ボイトレのジレンマ。技術を学ぶ事と、表現とのバランス

最近、複数人の生徒さんが、似た様な事で悩んでおられて、そしてこれは自分自身も2度通ってきた道なので、記事にしてみようと思います。


その悩みとは「レッスンで習った事に集中していると、自分の色、表現を出す事が出来なくなり、全然魅力的な歌じゃなくなってしまう」


というもの。


凄く凄く、分かります。僕自身、ボイトレを学ぶ中で全く同じ悩みを長らく持っておりましたし、その前には尺八でも、同じ悩みを長らく持っていました。


ボイトレって要するに、


「上手く声が出ない部分を、上手く出せるようにする」レッスンな訳ですよね。
それはすなわち「上手く出ない『原因』となっている部分を、今までと『真反対』のやり方にしていく」という作業です。


それって、長年染み付いてきた習慣と真逆の事をする訳だから、とっても集中力を要します。


それはある意味、そこに集中力を割いている間は「自分の歌いたいように楽しく自由に歌う」という事が、一時的に難しくなる事でもあります。


パソコンでいうと、重い動画ファイルの編集、書き出し作業中で、パソコンの動きが遅くなったり、ファンが大きな音を立てて回っているような状態ですね(笑)


しかしこれって、中々由々しき問題ですよね。


ボイトレを習う方は、『もっと自由自在に歌えるようになりたい!』というきっかけでボイトレを学び始めたのに、自由に表現したりする事が出来なくなってしまうという。


生徒さんでこの悩みを話して下さった方には、趣味で歌っておられる主婦の方や、国民的に活躍されてる歌手の方も。


趣味で歌っておられる方は、「楽しく自由に歌って、発表会などでみんなに素敵な声を届けたい」はずだったのに、前よりも自由に歌えなくなってしまったということ。


プロの方は、自分の強みや表現が出せない、ということ。


しかし、辛いことですが『新しい技術を身につける』って、そういう事なんです。特に最初の段階ほど。それを、乗り越えなければならない。


かくいう僕自身も、全く同じ経験があります。それも、2度。1度目は、尺八奏者として。そして2度目が、歌です。


僕は高校時代にクラシックの声楽から歌を学び始め、そしてひたすらに耳だけで、クラシック歌手の方の歌い方を真似して歌っていました。


そして、それが結構上手くいき、高校時代は音楽高校のピアノ科の学生だったにも関わらず、3年生の頃には、学生のコンクールの最難関の登竜門と言われる、毎日新聞社主催「全日本学生音楽コンクール」で、大阪大会1位、全国大会3位を頂くほどになりました。


周りの友人や先生からも、自分で言うのも何ですが、それはそれは評判が良かったです。もはや本専攻のピアノよりも。(笑)


しかしそうして歌にハマった僕は、大学生になってから、更に歌を追求したくなり、Youtubeで色々なジャンルの歌手を聞き、


『自分ももっと違う声で、色々なジャンルも歌ってみたい!』


と思い、声楽以外のボイストレーニングについての情報を集め、色々なメソッドのトレーナーの元を渡り歩きました。


そして最終的に、現在教えているヴォイトレ・マスター®️メソッドに出会い、お陰様で声の技術は飛躍的に伸び、毎レッスンごとに、どんどん自分の思い描く声に向かって、歩みを進めさせてくれました。


しかし、おかしい。周りの反応が芳しくないんです。


ボイストレーニングを受ける前の、感覚だけで自分の思うままに歌っていた頃の方が、明らかに自分の周りの人たちは、僕の歌に感動してくれていました。


実際に「凄く上手いけど、面白くない」という直接的な言葉を頂く事も多くなりました。


そして僕自身、『確かに声はどんどん良くなっているし、音域も凄く伸びた。けど、自由に表現する事が出来ない』という葛藤が、自分の中に常にありました。


ただこれは第一に、僕がとても不器用な人間で、僕自身が持っている歌心、『頭の中に鳴っている歌』は、かなりのレベルの技術を身につけないと出来ない様なものだったから、という事も理由もありますし、


加えて第二に、声楽時代につけた悪い発声の癖が、あまりに強かったから、という事もあります。様々な強い癖が複合的についていました。


そして、その状態で歌っている歴が長ければ長いほど、そして元々そのスタイルで自由に表現してきていればいる程、発声も歌い回し方も『1度全て崩す』作業がある分、とても長い時間がかかるし、集中力が必要です。


ただ、僕の頭の中には既に「鳴っている声、歌い方」があり、そこまでの道筋は見えていました。


しかし同時に、そこにたどり着くには、まだまだ時間がかかりそうな事も分かりました。


だから、僕は一度完全に人前で歌う事を辞め、自分が歌手である事も隠す事にし、歌い手としてのお仕事は基本、全てお断りする事にしました。


自分の中で『自分の表現を歌に乗せる事が出来始める、最低限のレベルに達するまでは、人前で歌わない』と決めたんです。


その期間は、とってもとっても辛かったです。


自分自身は歌う事は大好きだし、『こう歌いたい』と思い描いている表現もあるのに、それが出来るだけの技量が無い。


でも、後戻りも出来ないほどに、昔とは全く違う技術を、ある程度身に着けてしまった。


なんとかこの状態から抜け出すべく、レッスン頻度も月1、2回だったのを週1に増やし、レッスンの度に必ず、自分の憧れのシンガーのYouTube動画を持っていき


『この部分をこういう声で歌いたいです!』
『この音域で、こういう事をする事が今、苦手です!』


と、なりたい理想の声と、今の自分の課題を常に認識して、がむしゃらに走り続けました。


それでも、基本的にはとっても不器用で頭の処理能力も低い人間、なおかつ理想だけは一人前に世界レベルだった事もあり、非常に長い年月がかかってしまいましたが、


ある時『あ、いけるな』というフェーズに入りました。


そこからは、音楽が、歌が、ボイストレーニングを学び始める前の、何十倍も好きになりました。


勿論、お客様の反応も、一気に変わりました。


最終的に結局現在は、あまり表現者向きでは無い自分の特性に気づいて、出役は引退し、自分の持つ職人的な特性に合う『ヴォーカルコーチ』になりましたが、


しかし今もたまに、知人から頼まれた時にたまにコンサートなどで歌わせて頂くと、大変嬉しい事に「このコンサートを毎月やって欲しい!」と言って頂ける方や、感動の涙を流して下さる方が沢山いらっしゃいます。


そして勿論、その様な努力を重ねて得た今の歌声自体を評価して頂ける事も多く、公演で共演した方が『その声の出し方を教えて下さい!』とレッスンを受けに来られるケースも多く、現在生徒さんに、過去の共演者が沢山いらっしゃいます。


また、お客様にも『声が本当に素晴らしい!』と、『声』自体を褒めて頂けるような事も本当に多くなりました。


自分自身の中に、「表現したい事」や「こんなコンサートを作りたい!」といったものが何も無さすぎて出役を引退してしまう位に、全くもって「アーティスト」ではない、そんな僕の歌唱ですら、こんなに喜んで頂ける位にはなれるんです。


表現したいものがある方なら、尚更素晴らしいアーティストになられる事でしょう。


『表現力』や、『その人が歩んできた人生、人間性』といったものも、人の心に届く音楽には不可欠です。


しかし、『磨きに磨かれた技術』というものそれ自体もまた、非常に美しい芸術なのです。


その人の持つ高い技術力は、その人が『音楽を心から愛し、より自由な表現を求めてたゆまぬ努力を重ねる事が出来る、素晴らしい人間である』事の証です。


熱くなって少し話が逸れてしまいましたが、この悩みを2度経験して乗り越えた経験のある僕から、この悩みを持っておられる方にお伝えしたい事。


一時的に辛い時期となるかもしれませんが、必ず。抜けられるので、安心して下さい。


絶対に、「あ、いける!」というフェーズが来ます。


そして、そこに向けて僕も、全力でサポートします。遠慮なく(本当に、一切遠慮なく!)自分の中だけで抱え込まず、声の事でも、メンタルの事でも、苦しい時は、いつでも何でも相談して下さい。


↓ ヴォーカルコーチ松村湧太 LINE

この壁は、少しでももっと自由に歌いたいと願い、レッスンで教わったポイントをしっかり押さえて練習を頑張っておられるからこそ現れる壁です。この壁にぶち当たって悩む自分を、誇りに思って下さい。


絶対に、いけます。頑張って下さい。


松村湧太

世界一簡単・最速で結果を出すボイトレ。松村湧太VOICE LAB

音声学・言語学・ヴォイストレーニングを組み合わせた、秒単位で声を変える最先端ボイトレ「ヴォイトレ・マスター®︎メソッド」公式ヴォーカルコーチ、松村湧太によるヴォーカルレッスンについて。

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